遠忠のこだわり
いつまでも ずっと おいしく
三代目は考えました。「農業や漁業はもちろん、食べ物を作って世の中に提供する仕組みを良い形で次の世代につなげていかないと大変なことになる」と。だからこそ、業界の異端児と言われながらも貫いているのが、素材の仕入れを商社に任せっきりにしないこと。生産者と直接取引をすることで日本の第一次産業の現状に触れることができ、微力ながらも生産者を支え続けていきたいと考えています。
かつては江戸前の佃煮と言えばアサリ。しかし、全国的に不漁が続いている現状。日本の食品自給率はわずか37%です。そんな今だからこそ、大手スーパーとの低価格競争とも一線を画し、大切な素材を生かす調味料にこだわり、昔ながらの製法で作り上げた製品を食卓に届け続けたいと思っています。
素材について
国産素材へのこだわり
遠忠食品の主力商品は海苔の佃煮です。海苔は日本の広い範囲で生産されていますが、主に江戸時代からの名産地である木更津で、海苔を養殖している漁師から仲介を介さずに海苔を直接仕入れています。通常は乾海苔で作られることが多い佃煮ですが、直接仕入れをすることによって、より風味の高い“生海苔”での佃煮づくりが実現できています。東京湾を中心とした漁師さん達とは、すでに何十年ものお付合い。近年は全く採れなくなってしまったアサリは、実は漁師さん達にとっては海苔の収穫前の大切な収入源でした。また、ハマグリも全国的に同じ状況に陥り、そんな状況下で試作して商品化に至ったのがホンビノスの佃煮でした。今ではホンビノスの需要も増え、供給が間に合わないほどになってきていますが、共存共栄の関係を維持できれば、長い目で見れば目先の売上や利益を重視しすぎるよりも、互いが繁栄すると信じています。
また、海だけでなく日本中の畑や里山にも通い、後継者が育ちにくい農業にも注視しています。国産メンマは荒れた竹林の孟宗竹を商品化して販売することが竹林の維持やサポートに繋がり、里山を甦らせる一助になるはずだと信じていますし、国産ザーサイは畑ごとに農家さん達と直接交渉して、作付けしたザーサイを全量買い取っています。そして、あらたに取り組んでいるのが東京の地場産業を活発にする取り組みです。実は東京の自給率は1%にも満たないと言われているのです。それでも目を向けてみれば、スーパーに並ぶことはなくても頑張っている生産者達がいます。江戸野菜、在来種、まだまだ伝え続ける食文化は沢山あります。輸入に頼らない食生活をコツコツと支える姿勢が大切だと思っています。
人工的な添加物は加えない
創業時の100年ほど前、そして戦後の東京の食を支えた二代目。どちらもまだ一般家庭に冷蔵庫は普及していませんでした。創業当時は10品ほどで始まった商いも二代目になると30品ほどまでに増え、食糧事情も厳しかった当時は、築地市場に卸すそばから売れていく状況。作ってすぐに食べられるお惣菜が人気で、晩のおかずになる一品が重宝されたものです。その後、生産量を増やすために工場を創設した頃は、様々な食品添加物がもてはやされていました。当社もご多分に漏れず何種類か使っていました。しかし、昭和50年代の終わり頃、あらたな取引先となっていた生協さんからの要望で、着色料(カラメル色素)を使わない佃煮作りに転換することになったのです。カラメル色素は煮込み時間も短縮でき黒さを増すのに重宝されていましたが、基本の調味料や製法を試行錯誤することで、かえって当社が仕入れている黒海苔の素材の味を引き立たせる商品を作り上げることが出来るようになったのです。今も着色料や保存料だけなく、酸化防止剤、膨張剤、乳化剤、ph調整剤など様々な食品添加物がありますが、ぜひパッケージの裏ラベルを見てください。表示義務が課されている素材の欄に、皆さまの知らない調味料は見当たらないはずです。
調味料について
一目瞭然の素材の量
これは当社の「江戸前でぃ!生のり佃煮」とスーパーで必ずお見かけするA社の商品。海苔の含有量がわかる実験をしてみました。ともに内容物25gに水100ccを入れて5分ほどおいてみました。当社の商品は、徐々に海苔がふわ〜っと浮き上がってきますがA社の商品には大した変化はみられません。3枚目の写真は瓶を振って混ぜてみた直後です。同じ内容量ではあるものの海苔の含有量の差は歴然なのがわかると思います。残念ながら、A社にかぎらず海苔以外の添加物で水増しされている商品は多いはずです。人工的な甘さや旨味から脱してみて、素材そのものの味を感じていただきたいものです。
基本の調味料
醤油
厳選した国産丸大豆、国産小麦を麹を使用した醤油。もろみ(醪・諸味)は自然の恵に育まれ、ゆっくり時間をかけて醗酵熟成してゆきます。澄んだ色、豊かな香、深い味わいは代々伝わる醤油造りの技と手造りの良さを生かし、一つひとつ心を込め造り上げた日本の味です。
砂糖
種子島産のさとうきびを使用した粗糖です。精製度の低い自然に近い砂糖です。
水飴
国産甘藷澱粉と国産の大麦麦芽を使用。国産のさつまいもを主原料にした麦芽水飴です。
かつおだし
鹿児島県で加工された、かつお節と水だけを使用した抽出物。
発酵調味料
国産米発酵醸造調味料。国産の米と米こうじを原料として、日本酒の基となる「もろみ」を醸造して塩を加えた調味料です。
製法について
昔ながらの直火炊き製法を次代に
現在は大量生産に適している蒸気釜が主流となっていますが、遠忠食品では創業当初から頑なに守り継いでいる直火炊きにこだわっています。蒸気はボイラーからパイプで熱を届ける方法ですが、直火炊きは直径90cmもの大釜に火を直接当てて煮込んでいきます。その熱源は創業当初は薪でしたが、時代の変遷とともにコークスへと代わり、今では重油がその熱源となっています。主原料や商品によって使い分ける鍋は鉄と銅。いずれも数時間もの間、火を炊き続ける釜場は、冬は暖かくてよいのですが夏はまさに灼熱。職人達にとっては厳しい作業ですが、ふっくらと香ばしく仕上げるためには、高火力で熱することで鍋の温度を均一に高く維持できる直火炊きは欠かせません。中華料理をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
この煮炊き作業を担っている職人は現在4名。扱う素材の違い、その時の気温や湿度を見極め、焦げる寸前まで煮込んでいく作業。長さ125cmほどのヘラを手に、絶妙なタイミングで素材と調味料を混ぜていく。生海苔のように重量感のある素材では攪拌機も使用しますが、手混ぜとの頃合いを見極めるのも重要なポイントです。一度の煮炊き作業で使う調味料は約50kg。あらかじめ樽に仕込む合わせ調味料は、いずれも国産原料で昔ながらの製法で作っていただいた贅沢な調味料ばかりです。鍋の前に立ち続けて10年で、ようやく一人前と認められる、まさに職人技です。煮炊きが終わると次なる工程は詰め場へ。袋詰め商品は機械で詰めることができますが、複雑な形状の商品など当社製品のおよそ半分は手詰めで一品一品丁寧に詰めています。合成保存料を使用していないため、瓶詰め、袋詰めが終わると温浴殺菌の工程へ。製品に仕上がると、片手に乗るほどの小さな品ですが、そこにいたる全ての工程が人の手による作業、そしてチカラ仕事です。健全な肉体と集中力。これが健やかな食卓を守る職人“力”と考えています。
遠忠を支える顔
大切な生産者たち
私たちの商品は加工食品です。それを支えてくれているのは原料を提供してくれる生産者の方々です。良い素材が入手できなければ、私たちの商品は作ることができません。
直接、漁師さん、農家さんと膝を交えて話をすることで気づくことも多く、そして新しい商品が生まれることにも繋がっています。
昆布・茎わかめ漁師 栗山さん
(神奈川・横須賀)
栗山さん率いる佳栄丸は昭和38年、当時最新技術だったわかめ養殖を神奈川県に導入し、横須賀市猿島地先に自生する天然わかめの種苗から養殖を始めました。猿島わかめは、独特のめかぶ形状、葉体のしわ、切れ込みなど猿島周辺のみ現る特徴を持つわかめとして、食味でも評価高いものです。佳栄丸さんは、この品種のみを作り続け、以来50年にわたり品質の向上を目指し取り組んできました。
しらす漁師 岩崎さん
(神奈川・佐島)
ご家族で経営されているしらす漁師の岩崎さん。
『うちのシラスは日本一。のど越しが全然ちがうんだよ。獲ったらすぐ船の上で氷で締めて、1分1秒を争って陸に戻って釜に入れる。“他のとこのじゃダメだ”って、直売所に通ってくれる人がいるからさ、みんなの顔を浮かべながら漁をしてるよ』
シラスの加工に漂白剤を使用するところもあるなか、岩崎さんのシラスは獲ったままで即冷、即ゆで。なめらかな舌ざわりで、一匹一匹のうまみが際立ちます。
荏胡麻の生産者 有限会社モリシゲ物産
(埼玉・秩父)
『埼玉県秩父市の自社農園で無農薬の荏胡麻を社員みんなで大切に育てています。社長自ら土を耕し、無農薬・有機肥料で大切に育てています』
私達も苗を植える時期に何度かお手伝いに行きました。農家の大変な事、身を持って実感した出来事でした。農家さんの生産物を大事に加工して、販売したいと思っています。
ザーサイの生産者 地曳さん
(千葉・木更津)
木更津の漁師さんのご紹介で出会った農家の地曳さん。毎年、ザーサイを作っていただいています。息子の公伯さんが中心になり、試行錯誤しながら生産量を上げています。国産ザーサイの栽培を始めて10数年、今年はじめて量の確保ができました。農家さんと一緒に加工品でお役にたてればと思っています。
大切な製造スタッフ
遠忠食品の商品は素材の検品から火入れ、味付けにいたるまで一貫して自社工場で製造しています。殺菌、ビン詰め、最後に商品ラベルを貼ってお客様の元へお届けするまで、誰か一人でも欠けても成り立たないワンチームです。
宮島宏康(工場長)
越谷工場で二代目を担う工場長。常に現場の人間が暇を作らないように目を光らせている。料理学校を卒業しており、商品開発の腕は天下一品! 数々のヒット商品を生み出しています。頑固だけど優しくて頼れる工場長です。
菊池さん
中学を卒業してからずっと遠忠の職人として日々現場で働いています。主に海苔の佃煮を担当しており、絶妙な直火の火加減を見極めます。太りすぎが少し心配ですが、遠忠の頼れる重鎮です。
佐藤さん
くるみ甘露やピーナツ味噌等を主に担当しており、暮れの季節になると、きんとんや田作りも現場を先導して作ります! 暮れの季節はピリピリすることもありますが、普段は子ども思いの優しい職人の中の職人です。
柏木さん
主にふきや葉唐辛子を担当しており、現場では一番動き回ります!気遣い上手で現場の中では期待の若手です。積極的に仕事をこなし、工場長からも色々な仕事を任されます。配達もこなす遠忠のオールラウンダーです!
遠忠の歴史
[左]宮島一晃(3代目)代表取締役
大学卒業後、大阪の市場で商売の勉強をさせて頂き、その後、アメリカの放浪の旅、帰国後、遠忠食品に入社して早いもので40年が経ちました。「地産地消」「第一次産業応援」「国産食料の持久率アップ」などキーワードに体の動く限り頑張っていきたいと思っています。
学生の頃は波乗りに夢中になりましたが、現在は仲間とともにヨットで海に出るのが一番の楽しみです。[中央]宮島和一郎(2代目)代表取締役会長
子どもの頃は学校から帰るといつも手伝わされるのが嫌でした。遊びに行きたくても家業の手伝いが日課でした。20代で代表にならざるを得なくて、不安を抱えながら、全力で仕事をして今日になりました。作れば売れる時代もありましたが、今は商売の難しさを実感しています。
地道に発展できることを願っています。[右]宮島大地(4代目)
趣味は体を動かすことで、時間があればジムでランニングやトレーニングをしています! ジムが利用できない期間に本社のフロアを勝手にジム仕様に改造するほど好きです(笑)
工場の手伝いや販売は幼い頃から父と共にしていました。お世話になった社員の方々や、消費者、生産者の方々に少しでも恩返しができるように日々精進していきたいと思っております。
大正2年1913 | 初代・宮島忠吉が遠州(現・静岡県)より上京。 深川区(現・江東区)住吉町にて佃煮、惣菜製造販売の遠忠商店を開業。 |
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大正7年1918 | 第一次世界大戦終結 |
大正12年1923 | 関東大震災(M8.1)発生 |
昭和2年1927 | 東京地下鉄道開業(上野〜浅草) |
昭和14年1939 | 太平洋戦争(第二次世界大戦)開戦 |
昭和20年1945 | 東京大空襲で焼失し、終戦後に現在の日本橋蠣殻町に本社所在地を移転 東京大空襲・第二次世界大戦終戦 |
昭和22年1947 | 学校給食開始 |
昭和23年1928 | 株式会社遠忠商店設立 お手伝いに来てくれていた親戚の女性たちと二代目。まさに一族総出で製品づくりに励んでいた当時 |
昭和27年1952 | 二代目・和一郎が社長に就任 硬貨式公衆電話機が登場 |
昭和28年1953 | NHKテレビ放送開始 |
家電3種の神器(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)発売 | |
昭和31年1956 | 現三代目・一晃が宮島家の長男として誕生 二代目を囲む住み込みで働いてた職人さん達。このうちの一人はいまも現役で働いてくれている |
昭和36年1961 | 人類初の有人宇宙飛行成功 |
昭和39年1964 | 東京オリンピック開催 |
昭和40年1965 | 称号を遠忠食品株式会社に変更 |
昭和41年1966 | ザ・ビートルズ来日 |
昭和45年1970 | 日本万国博覧会(大阪万博)開催 |
昭和46年1971 | 資本金を1000万円に増資。埼玉県越谷市に現工場を従業員社宅と共に新設する マクドナルド銀座1号店開店 |
昭和51年1976 | ロッキード事件 |
昭和58年1983 | 生協と取引開始・着色料不使用の商品を開発販売 東京ディズニーランド開演・ファミコン発売 |
平成元年1989 | 平成に改元・ 消費税開始(3%) |
平成5年1993 | Jリーグ開幕 |
平成7年1995 | 阪神淡路大震災(M7.3)発生・地下鉄サリン事件 |
平成10年1998 | 社宅を撤去して工場を増築し、現在に至る 長野オリンピック開催 |
平成13年2001 | アメリカ同時多発テロ |
平成15年2003 | 「江戸前生のり」★第52回 全国水産加工たべもの展・水産庁長官賞 受賞 |
平成16年2004 | 次男・宏泰が二代目工場長に就任 |
平成17年2005 | お台場海苔作りに協力、佃煮教室を開催 |
平成20年2008 | 「江戸前でぃ!」シリーズ販売開始★東京都地域特産品認証食品(Eマーク)認定 リーマンショック・中国冷凍ギョーザ事件 |
平成21年2009 | 「江戸前でぃ!」シリーズ7品★東京都地域特産品認証食品(Eマーク商品) |
平成22年2010 | 三代目・一晃が代表取締役に就任。 直営店・遠忠商店を本社所在地に開業 |
平成23年2011 | 東日本大震災(M9.0)発生 |
平成25年2013 | 「江戸前でぃ! 生のり佃煮」 ★江戸前海味クラブ(東京湾の環境をよくするために行動する会) ブランド認定第一号 |
平成28年2016 | 熊本地震(M7.3)発生 |
平成29年2017 | 東京の応援団「メイドイン東京の会」仲間とともに創設、初代会長に三代目・一晃が就任 |
令和元年2019 | 令和に改元 |